人獅子(ヌリシンハ=ヴィシュヌ)
インド ラージャスターン、又は、ウッタル・プラデーシュ 11世紀~12世紀
材質:砂岩(インド白砂岩・淡いベージュ) 
高:52.5cm 横:38cm (展示台含 高:60.5cm 横:42cm)

ヴィシュヌはシヴァとともにヒンドゥー教の信仰世界を二分する最高神であり、世界で
悪がはびこり世の中が混乱すると、ヴィシュヌは善行者を救護するため悪業者を絶滅し
正義の樹立を目的として、姿を変えて天下り、それを解決します。

ヴィシュヌの十の化身(アヴァターラ)の一つで特徴的な姿の人獅子(ヌリシンハ)です。

魔神ヒラニヤカシプは、厳しい苦行を行い、ブラフマーの恩寵により、神にも魔衆にも
人間にも獣にも
殺されない身体となり、不死身となった魔神ヒラニヤカシプは、三界(天
・地・地下)を征服してしまいました。
彼には四人の息子がいたが、その一人プラフラーダが熱心なヴィシュヌ信者である
ことに腹を立て、息子を呼び寄せ殺そうとしたが、息子はヴィシュヌの偉大さと偏在性
を説き、広間の柱の中にもヴィシュヌは存在している事を説いたが、父は怒って柱を
蹴ると、突然、音とともに柱が裂け、半身が獅子で半身が人間である人獅子の姿で
現れて、ヒラニヤカシプを爪で八つ裂きにしてしまいます。

ヴィシュヌは、人間にも獣にも殺されないヒラニヤカシプを退治するため、人でも無い
獣でも無い、半身獅子、半身人間の、人獅子の姿に化身し地上に天下ります。


この作品では上段に四臂の坐像、左右に花綱を持つ天人を配し、柱の上端には、
ブラフマー坐像と弓を持つラーマを表現しています、左右にはマカラ(怪魚)に乗る
神々、その下では象の上で跳ね上がる、インド寺院で多用されるレオグリフ(シャール
ドゥーラ)を表現しています。

中央で人獅子と化身した姿で、魔神ヒラニヤカシプを八つ裂きにして退治し、左右の
頭に手をおく人物などは、驚き嘆く息子たちでしょうか、足もとでは、かしずく女性
の崇拝者が表現されています。

淡色の白に近いベージュのインド白砂岩に彫刻され、剝離したオリジナルの部分を繋いだ
補修などが所々に見られますが作品の美観を損ねるものでは無く、アヴァターラの主題と
砂岩の風化と相まって、インド神話世界を描く幻想的で美しくも迫力のある秀逸な作品です。



ins26

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