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銀製銘文水瓶(ケンディー)

ベトナム チャンパ 7世紀〜8世紀
材質:銀 高:17.3cm  重量:388g

この水瓶は、東南アジアのこの時代では、極めて貴重な銀素材で制作されています。

7世紀〜8世紀初の特徴を有した文字で刻まれたサンスクリット語の銘文の解読では
シヴァ神に捧げられた銀の容器であることが刻まれています。

サンスクリット語は、王族に愛され、ヒンドゥー教の儀式で使用されていました。

銘文、素材などからチャンパ王(族)が、神事にて捧げた水瓶であることが推測されます。

チャンパ王国は、現在のベトナム中部沿海地方(北中部及び南中部を合わせた地域)
に存在した王国で、カンボジアのクメール王国と覇権を争い、アンコールの地を占領
していた時期もあり、アンコール・ワット遺跡やバイヨン寺院には有名なチャンパ水軍
との戦闘場面やチャンパ兵士の浮彫が残されています。

中国の記録によれば、王たちはヒンドゥー教の神々を祀っていたとの記述が見られ
インド文化を受容しながら、東南アジアで独自の文化を築きました。

海の王者チャンパと呼ばれ、中国と直結する海路で海上交易も盛んで、チャンパ特産
の黒檀や象牙、なかでも香木「沈香(伽羅)」は世界で珍重されていました。

古代日本にもチャンパ(林邑)の名は知られており、正倉院御物の香木「蘭奢待」や、
宮中雅楽の「林邑楽」は、中国経由で奈良朝に伝わっています。

鉄の赤錆、銅の緑青は他の遺物からの、もらい錆に覆われ古色蒼然とし、刻まれた
神名は真臘とチャンパとの歴史的関係性にも迫るインドシナ半島の至宝です。