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This is The Khmer Art

マカラ(装飾金具)
クメール
 サンポール・プレイ・クック様式 7世紀前半
材質 青銅鍍金 高:5cm 幅:6.9cm

マカラは、インド神話で海の怪魚として、モデルはシャチともワニだともい
われ、象の長い鼻を持つ姿で表現されています。

インド神話では、ヴァルナ(司法神・海、川を支配する神)の乗り物とされ
また愛神カーマの旗印ともいわれています。

生命の源は水であり、地球の歴史と同じくインド神話でも、総ては原初の
大海から空や大地、そして人間と動植物、総ての生命が生まれます。

クメール青銅作品では、神話の乳海攪拌から生まれたアプサラをマカラは
口から吐き出し、蓮の茎を吐き出すなど、水(海や湖)を象徴するかたちで
も表現されています。

リンテルは祠堂や楼門の入り口上部を装飾する建築部材で、その図様か
ら遺跡の建築年代を推定する上で重要な資料となります。

リンテルの最初期とされる、真臘の王都サンポール・プレイ・クックに建立さ
れた、7世紀前半のレンガ造祠堂を飾るリンテルにみられるマカラと同様式
で表現された、同時代の装飾金具(輿などの乗り物、玉座、王侯の家具な
どの棒状部分の先端を装飾する金具)です。

この時代のクメール青銅遺物は僅かで、なかでもクメール青銅作品におい
て7世紀に遡る装飾金具は、博物館・美術館収蔵や書籍等でも紹介された
ことはありません。

怪魚マカラを表現した青銅作品は比較的数少なく、この一対の青銅に鍍金
されたマカラは、クメール青銅美術のなかで最も古作のマカラで、世界で
唯一の作品です。


参考図版 『アンコールワットとクメール美術の1000年展』 1997 東京国立博物館/大阪市立美術館