仏陀誕生

カンボジア 19世紀~20世紀初
材質:象牙 高:11.4㎝ 最大径:3㎝

仏教国カンボジアの仏陀誕生を刻んだ象牙彫刻です。
象牙は、破断面から森林など自然のなかで拾得された象牙(牙先)
に仏陀誕生の場面を文字とともに刻んだ精緻で珍しい作品です。

釈迦は、紀元前5世頃インドの小国、釈迦族(シャーキヤ族)の太子
として
シュッドーダナ王(浄飯王)とマーヤーデーヴィー(摩耶夫人)
を両親として生まれました。

この作品では、仏伝による仏陀誕生の場面が描かれています。
マーヤー夫人が、右脇腹から白象が入る夢を見て懐胎(托胎霊夢)
します。
懐妊して10か月後、マーヤー夫人が両親を訪ねるため妹(マハプラ
ジャパーティ)と供のものと城を後にし、ルンピニーの園に足をとどめ
アショーカの樹の枝に右手をかけた時、右脇の下からシッダルタ太子
(釈迦)が誕生しました。

作品中、樹の枝に右手をかけているマーヤー夫人とその横で布を掛
けているのは、7日後に没したマーヤー夫人の、第二王妃として、シ
ッダルタ太子の継母となる妹のマハプラジャパーティです。


母を傷つけることなく脇腹より生まれ、人間が触れる前に、神々である
インドラ(帝釈天)とブラフマー(梵天)が、最初に受け止めたとされます
が、作品では雲上に、合掌する四面(浮彫の為、三面)のブラフマー
(梵天)と、インドラ(帝釈天)が表現されています。

また、誕生と同時に忽然と現れた蓮の花の上に立つと、北に向かって
7歩(7歩行)行き東西南北を順にに見据え、右手で天を、左手で地を
指し「天上天下唯我独尊」と宣言したとされます。

この作品での誕生仏は、中国南部や東南アジアなど南方で多く見ら
れる逆手で左手で天を、右手で地をさしていています。また7歩行を
一歩一歩を蓮の花で表現しています。

仏伝図としては仏陀誕生と7歩行の二つの場面を表現した物語性のあ
る手の込んだ美しい作品です。
sa146
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