リンテル
クメール 10世紀後半ー11世紀初
材質 砂岩 高:58cm 横:145cm
リンテルは、石造建築であるクメール寺院の入口の上に水平
に渡される装飾された建築石材です。
中央には、カーラ (キールティムカ、誉れある顔)の上で獅子
と象を振りまわす姿で、ヴィシュヌの化身とされるクリシュナが
描かれています。
神話に基づき、花綱の右端で毒竜王カーリヤを退治し、左端
では悪魔ケーシンが巨大な馬となって襲いかかる姿をあらわ
しています。
カーラからは左右に二頭の獅子が吐き出され、獅子からは
花綱が吐き出されています。花綱の周りには流れるように渦巻
く葉状文様が描かれています。
上段では、中央に女神坐像を配し、両脇では聖鳥ハンサが向か
い合い、左右には合掌する苦行僧が並んでいます。
クリシュナほか、装身具、腰衣などにバンテアイ・スレイ様式に
みられる特徴など随所にみられますが、11世紀のバプーオン様式
の萌芽的特徴も部分的に見られることなどから10世紀後半、又は
11世紀初のリンテル作品と考えます。
世界遺産アカデミー主催・在日本国カンボジア王国大使館後援
『アンコール王朝展』2005年 出品・展示品ガイド所載作品
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