金製宝飾指輪(Ribbed hoop)
インドネシア 中部ジャワ 8世紀~10世紀
材質:金銀合金・ガーネット 高:2.7cm  重:11.6g  
指輪サイズ:57-58(japan17-18)

カボションカットのガーネットがセットされ、指輪の外周に球形の
膨らみを連続して表現しています。

1927年のドイツ映画、SF 「メトロポリス」のアンドロイドを彷彿
させ懐かしさの中に近未来を思わせる、レトロモダンの意匠は際立ち
個性的で洗練された美しい指輪です。

この指輪が制作された8世紀~10 世紀頃は、インドネシア美術の
黄金時代であり、その中心、中部ジャワは大乗仏教のシャイレー
ンドラ朝とヒンドゥー教の古マタラム国が歴史を刻んだ時代でした。

ボロブドゥール寺院遺跡(シャイレーンドラ朝)と、古マタラム国の
プラバナン寺院群はユネスコ世界文化遺産に登録されています。

この指輪の金には、表面の金純度を上げる、「Depletion gilding」
と呼ばれる金表面処理がなされています。
日本の工芸では「色揚げ」と呼ばれ、古来より日本の小判を黄金色
にするための表面処理に使われていた技法です。
自然の金には、銀や銅、その他の金属が混合していることが多く
銀の含有量が増えると金色が薄くなります。

自然金の銀を多く含むものは「エレクトラム」と呼ばれ、純度の低い
エレクトラムを黄金色に見せる処理は、古代世界の早くから行われ
ており、紀元前4千年の金製遺物からは、すでに金の表面処理により
銀を除去し、表面の金品位を高めていたことが知られています。

「Depletion gilding」は、金に含まれる銀などを塩や酸などの薬品
によって除去し、金表面に、金のみを残して表面の金純度(金品位)
を上げる、金の表面処理技術です。

金の表面処理は世界各地で行われており古代エジプト文明やアンデス
文明の金製遺物、東南アジア文化圏では、近年の調査研究により
カンボジアの鉄器時代の遺跡「プロヒア」で発見された金製遺物から
も確認されています。

この指輪の蛍光X線元素分析では、金表面では、金94.7%、銀4.3%、
銅0.8%の金品位に対し、内部では、金21.4%、銀73.7%、銅4.7%
のテスト結果でした。

このデーターから、現代の金銀合金の技術でも、硝酸が銀に届き
やすくするために、銀の含有量を75%になるように銀を加え金品位
を低くしています、この方法を「四分銀法」と呼んでいますが
この指輪の銀含有量は73.7%で、ほぼ一致しており、古代の金細
工師の知識と技術の高さに驚かされます。

この興味深い指輪は、いわゆる古代世界では魔法であり秘術である
技術を駆使した、謎めいたロマンある錬金術の結晶でもあります。




Ancient and Historic Gold 10

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