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蓮の香炉
クメール アンコール期 12世紀~13世紀
材質 青銅 高:18.5cm 幅:26.5cm
花弁にそって美しい曲線を描く茎の左右では、これからひらく若葉と小さな蕾
を表現しています、装飾にハンサやナーガを伴わない作品で、これまで博物
館・美術館の収蔵でも、また書籍などでも紹介されたこと無い、初見のクメー
ル蓮の香炉で大変珍しい作品です。
上村勝彦訳『原典訳マハーバーラタ3』聖地巡礼(第八十章~第百五十三章)
「サウガンディカの花」の章では、カイラーサ山中の美しい森にはクベーラの
宮殿付近の山の急流に生じた、羅刹たちに守られた心地良い蓮池があり、そ
の池は青蓮に満ち、神々しく、黄金の蓮があり、世を浄化するものであり、美
しく、希有の外観を呈していた。
その蓮池には青蓮とサウガンディカに満ち、最高に芳しい黄金の蓮で覆われ
そのサウガンディカ蓮は最高の芳香を有すると語られています。
クメールの蓮のかたちの香炉は、このサウガンディカ蓮をイメージしていたの
かも知れません。
参考文献:『原典訳 マハーバーラタ 3』 2002年 上村勝彦 ちくま学芸文庫