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銅鏡 ②
クメール アンコール期 11世紀~13世紀
材質 青銅 径:19cm(展示台含 高:31.5cm)
アンコール王朝時代の鏡は、背面(裏面)の縁に沿って、陰刻線で同心円を刻む
シンプルなデザインです。
青銅鏡の柄(取っ手)は、参考画像の遺跡浮彫りで見ることができ、魚の尾のような
デザインです。(画像・プノンペン近郊の寺院遺跡 ワット・タプロ-ム 12世紀後半)
鏡の柄は青銅の鏡部分とは別の、石製の鋳型によって鉛(又は鉛合金)素材で作
られ接合されます。
ごく稀に柄が残された状態の鏡が出土しますが、殆どの出土する鏡は柄が残され
ていません。多くの遺物で鏡と柄の接合の跡が残され、その痕跡が確認できます。
(下段画像にてご確認ください、鏡面下端の白く見える部分が柄との接合跡です。)
遺物の鏡はどれも同心円のデザインで、泥などを落としクリーニングされ美しいも
のだけが美術品としての価値を持ち、粉末状の斑点などの青銅病や腐食による凸
凹、変形や割れ、補修などのあるものなどは資料的価値のみで扱われます。
この作品は、サイズもあり状態は良く鏡面もスムースで美しさのある良い鏡です。
これらの鏡は、アンコール王朝時代の13世紀末にカンボジアを訪れた周達観の
『真臘風土記』 (三)宮室(住居)では、『国王が政事を見る場所には、金窓があり、
その窓格子の左右の四角い柱の上には鏡がある。(鏡)は約 四、五十面あって、
窓のわきにならべ置かれている』 との記載があります。
この時代の青銅は非常に高価なもので、恐らくこれらの鏡は、王宮、宮廷生活又は
寺院など限られた場所、人々によって使用されたものと思われます。
鏡は取り外しの出来る金属製の特注の展示台で、バランスよく美しく展示できます。
周達観は元の使節に随行してアンコールを訪れ約1年間滞在し(1296~1297)アンコ
ール王朝の、自然・文化・習俗・産物などを綴った見聞記 『真臘風土記』 の著者。
参考書籍・『真臘風土記』 アンコール期のカンボジア 周達観・和田久徳 訳注 平凡社 1989年