参考画像 1984年 東京国立博物館 インド古代彫刻展 図録 24「宮廷物語のある断片」
クシャーン時代 1〜2世紀 赤砂岩 マトゥーラ博物館蔵
ヴェッサンタラ・ジャータカ(布施太子前世物語) ins 10
インド クシャーン時代 マトゥラー 1〜2世紀
材質 赤砂岩 高18cm(台込み26cm
ストゥーパの玉垣の柱の断片と思われる作品で、恐らく釈迦(仏陀)
の前世における物語の547話からなる、ジャータカ集の最終話ヴェ
ッサンタラ・ジャータカの一場面と思われます。施しに悦びを見出
し、布施の徳を称え続け、ついには最愛の妻や子供まで布施する
布施太子の物語です。
この場面は、布施太子ヴェッサンタラ王子は干ばつに苦しむ隣国
のバラモンに乞われ、どこにでも雨を降らす事の出来る、国に繁栄
をもたらす大切な白象を隣国にあげてしまいます。
そのため国民の怒りを買い国外追放となり、家族とともに馬車に
乗り進むうち、乞われて馬車も、馬も布施してしまい、ついには長
子ジャーリを肩に乗せて歩いている場面と思われます。
ヴェッサンタラ王子は、前世における仏陀であり、ジャーリは、仏陀
の子ラーフラであるとされています。
マトゥラー独特の白斑のある赤砂岩に彫刻された、仏陀の前世の
美しい物語を刻む作品です。